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私の失敗談

Aeolusのメンテ中、ラダー(舵)海底に落とす!

 

 4月から横山さんが、わがヨットクラブの正式会員に加入して頂くこととなり、3月の中旬、まじかに迫ったヨットシーズンに備え横山氏とAeolusの整備をしていた際、この失敗談(その5)が起こりました。

 

【ラダーが落ちた!】

 311日(水)、キャビン内のテーブル金具の破損の修理やベンチ下に置いている各種の用具がセーリング時にゴロゴロと移動するので、それらを固定する為、ナイロン網にくるみ固定保管する方法などを横山氏と相談しながら作業を行いました。

 そのあと、ラダーの木製のティラー(舵柄)部の白い塗料が剥げ落ち、見苦しく以前から横山氏が気にしていたので、ティラーを外し横山氏が自宅に持ち帰り塗装する段取りとなった。

 私たちはラダーの上部シャフトとティラーをL字形に接続している3本のボルトを外し、ティラーを取外したが、最後の1本のボルトはティラー取外しとは関係ないので元に戻そうとした。ところが今度はなかなかボルトが元の穴に入らない。もたもたしているとラダーの上部のシャフトが見えなくなった。シャフトに取り付けられていた割リングのみが残っている。

 横山氏が「ラダーが落ちた!」とつぶやいた。「えー」私はラダーシャフトが通っていた船体の穴を覗いてみると海面が見えた。ラダーが音もなく海底に沈んだのである。私たちは一瞬「頭が真っ白」になり、呆然としていた。

 後で良く調べてみると、実はティラー取付けには3本のボルトの内の2本だけで、最後の1本はラダーが抜け落ちない為ラダーの上部シャフトを割リングで挟み込み、固定するためのボルトであった。

 二人ともこのラダーの取付方法とティラーの接続方法を十分に理解していなかった。

 この時から1か月以上、ラダーを失ったわが愛艇Aeolusに、私たちは虚しい日々を過ごすこととなった。


【ラダーの回収】

 46日(月)曇り時々小雨の午前中、メンテ業者の石垣氏が桟橋で潜水の準備をしていた。

 313日(金)と25日(水)にラダー探索の為、横山さんが船尾近辺の海中にカメラを入れてみた。海底までの水深が89 mあることと海中の視界が悪く11.5 m程度であることが分かった。25日遂に海底に上下が反対になって、先端部のシャフトが海底に突き刺さった状態のラダーを発見した。【右上写真 海底に上下が反対になって突き刺さたラダー発見】

 私はその写真を石垣氏に見せて間違いなく船尾近辺の海底にラダーが沈んでいることを説明した。

石垣氏はドライスーツを着込み、船上の船尾に酸素タンクを固定して、それとホースで接続された酸素マスクを顔にセットし、引上げ用ロープを持って1回目の潜水作業に入った。

【左写真 石垣氏1回目の潜水】

 石垣氏がすぐに上がってきて、ウエイトを取って欲しいと言ったので、私は腰に巻き付ける重いウエイトを石垣氏に渡した。

 510分と経過したが今度は上がってこない。10数分後に上がって来たときは、ラダーを確保したようでロープを引張り引き上げるようなゼスチャーをしたので私は引き揚げ始めた。ラダーが見えてきた。結構重い、最後はラダーのシャフトを握り船上に引き上げた。回収作業は3040分で終わった。

「海中は視界が悪く、普通のダイバーにはこの作業は無理なことと、事前にラダーの位置をカメラで確認出来ていたので、潜水回収作業が短時間で出来た」と石垣氏は話した。

 ラダーはヘドロで真っ黒に汚れていたので、ホースを桟橋の給水栓に差し込み船上で水洗いをした。【右下写真 回収されたラダー(水で洗った後】


【ラダーの取付】

 416日(水)、Aeolusを神戸マリーナへ回航して、上架の予定でしたが、回収したラダーの全長がシャフトを含めて1880 mmと思ったより長く、上架して船台に乗せても、ラダー取付け位置の真下に1.9 m近くのスペースが確保できるかが問題となり、結局上架しないで、神戸マリーナの上架場所の比較的浅い場所で、神戸マリーナの長嶋氏他1名が海中でラダーを差し込むこととなりました。

【左下写真 長嶋氏ともう1名が海中からラダーを差し込む】

 2本のロープでラダーを巻き結びにして、ラダーを海中に沈め、ラダーの上部シャフトの先端を船尾船底のラダー差込口に挿入して、ラダーを巻き結んだ2本のロープを船尾の左ハル側と右ハル側に1本ずつに分け、船上から同時に引張り、海中でもラダーを押し上げ、ラダーを定位置まで引き上げる作業を行う。ラダーのシャフト先端がコックピットのティラー取付位置まで出てきたら、シャフト先端部にラダー抜け落ちを防止する銅製の割リングを差し込み、予めティラーに取付金具を2本のボルトでセットし、その取付金具の反対側の端部を介して残り1本のSUSのボルトで割リングを締め込み固定し、ティラーとラダーシャフトがL字型にセットされた。

 作業は1時間ほどで無事終了しました。

 私たちは再びラダーを取り戻したAeolusに乗りこみ、この1か月余りの虚しさの後のラダーのありがたみを噛み締めながら係留場所に戻りました。

 

 ラダーを回収して頂いた石垣さんとラダー取付けに協力頂いた神戸マリーナの長嶋さんたちにお礼申し上げます。【いぶすき】